書は文字を用いた芸術であるがゆえにその母国語の国の中でおさまりがちであるが、真の芸術であれば言語を超えて伝わるはずだ。
そしてそのためには単に字を書いたものや逆に奇をてらっただけのものではなく、時代性、哲学性、普遍性といった要素が必要となってくる。
自分の書においては「葛藤」が大きなテーマになっている。単純な対立構造ではなく、せめぎ合いの過程があってそのギリギリの狭間で生まれるものに微かな、だが確かなる煌めきを見出す。
これはこの時系列的対立構造を通して、人間の存在意義の本質や在り方を取り戻すことができるのではないだろうかという概念の提唱でもある。墨に対して徹底的に細かい仕事をすることで、このテーマを表現している。詳しくは別途記そうと思うがこの作品の在り方は、結果としての余白にこそ価値が生まれることの象徴でもある。